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大阪高等裁判所 昭和35年(ラ)224号 決定 1960年10月21日

抗告人 山下嶺茂

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消す。本件申立を却下する。」との裁判を求めるというのであり、その理由は別紙抗告の理由に記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

抗告人の所論は要するに、山下已敏は抗告人の子ではないから抗告人には扶養の義務がないのに、原審判はその義務ありとして抗告人に養育料の支払を命じたものである。というに帰するのであるが、抗告人が右已敏の母河野好子との協議離婚の届出をしたのは、抗告人も自ら認めるとおり、昭和二七年一二月一八日であり、右已敏が出生したのは、抗告人提出の戸籍謄本によれば、昭和二八年九月一〇日(なお、原審における右河野好子尋問の結果によれば同年五月一七日頃)であることが認められる。してみると右已敏の出生がその戸籍に記載せられたとおりの日であるとしてもなお同人の婚姻の解消後三〇〇日以内に出生した子として抗告人の嫡出子であると推定せられるのであつて、抗告人がその主張するような事情により、右已敏が抗告人の子でないことを法律上主張するためにはその旨の確定裁判のあることが必要であるのに、そのような裁判のあることは抗告人の主張立証しないところであるから、抗告人の所論は既にこの点において失当たるを免れず、その他記録を精査しても原審判にはこれを取り消すべき違法の点がなく、よつて本件抗告は理由なしとしてこれを棄却し主文のとおり決定する。

(裁判長判事 吉村正道判事 竹内貞次判事 大野千里)

抗告の理由

一、抗告が相手方の法定代理人親権者と婚姻を為す際抗告人を偽り他に情夫のある事をかくし婚姻した事が後日抗告人に発見された事、又婚姻後も操行不良にて度々家庭の不和を起し貞操観念がとぼしいので離婚問題が持上つた依つて協議離婚した、其の際相手方の代理人親権者は懐胎の事実について相手方の法定代理人親権者に対し問いただした際懐胎の事実を認めなかつた事。然るところ、事実上の離婚は昭和二七年十月末日であつたが形式上の離婚届を為したのは昭和二十七年十二月十八日となつて居るが実際夫婦関係をと絶したのは昭和二七年十月の始めからであつたので本件出産については昭和二七年十月末日より起算するも民法第七七二条の婚姻の解消又は取消の日より三百日以内出生した云々の法文に該当しない旨を主張し本件について充分の調査を申述べたにもかかわらず裁判所は相手方の法定代理人親権者の主張を入れ以て本決定をしたことは事実の認定を誤つたものであるから失当である。

依つてここに抗告を為す次第であります。

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